
ひところ、「憎悪表現」と訳される“ヘイト スピーチ”などという面妖な運動が日本のあちこちで繰り広げられていることが新聞やテレビで頻繁に報道されました。最初は、こんなことが本当にこの日本で起きているとは俄かに信じられませんでしたが、すぐに本当だと判って、“美しい心”をもっているはずの日本人がどうしてその“美しい心”に自分で泥を塗るようなことをするのかと、慨嘆せざるを得ませんでした。これまで、折に触れて海外の各地でときどき発生する粗暴な“反日騒動”のことが報道されましたが、「地球上にはまだこんな野蛮な人々もいるのだ」と、胸を痛めながらも他人事と冷ややかに見ていることができました。「思い遣り」とか「助け合い」とか「寛容」といった“美しい心”を持った人々が住むはずの“成熟した”日本ではとうてい想定できない事態だと思いこんでいたのです。ところが、その“ヘイト スピーチ”が、あろうことかこの日本各地で実際に行われていることが否定できない事実であることを知らされて、それはひとりよがりの思い上がりにすぎず、日本もまだまだ幼児期の域を出ない“未成熟”な段階にいることを思い知らされたのです。
文化の根底に相通ずるものを共有している東北アジアの“草の根”たちが、成熟した共同社会づくりに協働することを志として、ささやかな活動を続けている「信州渡来人倶楽部」ですが、今年の「渡来人まつり」の基調講演を、長期にわたって韓国・北朝鮮双方で取材活動をしてこられた平井 久志さん(共同通信社編集委員兼論説委員)に「朝鮮半島情勢と南北関係そして私たち」という演題で12月8日(日)松本勤労者福祉会館でやっていただくことになりました。私たちは最も近い隣人である朝鮮半島の事情についてあまりにも知ら無すぎるように思います。“美しい心”の発露である“和”づくりの第一歩は、まずお互いをよく知りあうことからはじまります。お互いに知り合っている間柄では、少なくとも「憎悪」とか「誹謗中傷」「罵詈雑言」などという品性劣等な恥ずかしい行為は起こらないものです。是非多くの方に平井さんの講演をお聞きいただき、南北関係と現在の情勢について何はともあれ知っていただき、平和で真の友好親善を実現できるように力を合わせることができればいいなあと念願しているのです。
松本大学・信州大学 名誉教授 信州渡来人倶楽部代表 中 野 和 朗
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